アイヌ刀は民族資料として博物館等に収められているもののほかに、遺跡からも多く出土します。遺跡から出土する場合、多くはお墓の副葬品として出土します。
弘前大学の関根達人教授による分析では、全体の4割弱のお墓から出土しており、男性に限ると6割、女性でも1割強で刀が副葬されています。これは世界中の民族誌を見ても非常に多い割合です。また、つばや刀装具だけが副葬されている例もあります。木製の刀身の場合、朽ちてなくなってしまうことがあるため、刀装具のみの場合は木製の刀身やさやなどが副葬されていた可能性があります。刀が多く副葬されていたのはアイヌ文化の特徴であり、それだけ多くの刀が流通していたことを示すものでもあります。
アイヌ語で踊りのことをリムセと呼び、刀を使った踊りをエムシリムセと呼びます。男性の代表的な踊りとして、祭りや儀式の際の魔を払うための踊りとして踊られます。つばが鳴るように刀を引き付けたり、2人で刀を打ち付けたりします。こうして力強く踊り、刀を振りかざすことで魔を払うとされています。
当館にはアイヌ刀に関する資料が多く収蔵されていますが、そのほとんどはこれまで展示の機会があまりなかったものです。アイヌ刀全般に関わる展示を通して、アイヌ文化の豊かさ、和人とのつながりを知るとともに、当館のアイヌ資料の豊富さを知るきっかけになればと思います。
(苫小牧市美術博物館学芸員 岩波連)