続く冷え込み

  • 土曜の窓, 特集
  • 2024年2月3日
続く冷え込み

  小学生の頃、天文の分野に将来進むのもいいかも―と考えていた時期があり、よく星空を眺めていました。星の観察は、気温が低く、湿度が低い方が大気の透明度が高くなるため良くなると言われています。地元の北見市の冬はこの条件に当てはまりますので、寒空の下で見る星空は非常にきれいです。少し車で移動すれば、街灯のほぼ無い所に行けたので、星を観察するにはうってつけの環境でしたし、プラネタリウムもよく見に行っていました。

   ただ、ある日、「将来なりたい職業を考える」といった学校の道徳か何かの授業で、気持ちは大きく変わってしまいます。その授業でもらった「職業紹介」の冊子の中に「天文学者」もあったのですが、「お金を稼ぐのは苦労するかもしれない」というニュアンスのことが書いてあったと記憶しています。小学生で何も知らないながらも、漠然と将来のお金の不安は当時からありましたので、その冊子を見て「あぁ、そうなのか」と残念な気持ちを抱くとともに、天体への気持ちが一気に冷え込んでしまいました。

   冷え込みというと、冬季間は2月上旬くらいまでに、道内ではマイナス30度の観測があることがほとんどです。道内でシーズン初めてのマイナス30度を観測する地点は、上川地方の占冠や旭川市江丹別など、道内でも特に寒さの厳しい所がほとんどです。2月中旬に差し掛かってもマイナス30度を下回る冷え込みが観測されていない場合は、「今シーズン、マイナス30度はなさそうだな」という感覚でいる気象予報士が道内には結構いるかなと思います。

   朝晩の冷え込みのピークの時期は2月後半には過ぎますが、私の天文に対する気持ちの冷え込みは戻ってくることがなく、それ以来、星を眺めることも少なくなり、「将来なりたいこと」というのをどこか遠ざけるように過ごしていたような気がします。天体望遠鏡を用意してくれた父に、そんなことを考えていたなんて、高校生にもなると素直に伝えられるわけもなく、今になってみると申し訳なかったなと思っていますが、高校の時は周りの人が将来の進路を定めて進んでいく姿を、少しうらやましさや焦りの気持ちを感じながら見ていました。やりたいことも特に無かったので、大学卒業後は何となく惰性でソフトウェア開発の会社に就職することになります。(続く)

  (気象予報士)

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