オオジシギ調べ隊、オーストラリア訪問 住みかの湿地が乾燥、ひび割れ

  • レンジャー通信, 特集
  • 2020年2月7日
ジェラボンベラ湿地のオオジシギの案内板前で

  前号でお伝えした通り1月上旬に、オオジシギが越冬するオーストラリアの首都、キャンベラのジェラボンベラ湿地を「オオジシギ調べ隊」の小学生たちと訪問しました。私たちの日程に合わせて、オーストラリアチーム(研究者やヤングレンジャー)が湿地にかすみ網を張ってオオジシギを捕獲し、足環や衛星追跡装置を装着する調査を計画してくれました。報道されている通り、現地は森林火災が深刻で、室内待機勧告もあり得る中での訪問でしたが、私たちが滞在した期間は幸いなことに影響も少なく、無事、野外での調査に参加することができました。

   滞在2日目、私たちは夜明け前に、前日にオーストラリアチームがかすみ網を張った場所へ向かい、そこで3羽のオオジシギを捕獲しました。小学5年生と6年生の男子が「湿地なのに乾燥していた」と驚いていましたが、そこは例年であれば、大人が胴長を履いて歩くほどの水深があるそうです。今年は、水はおろか地面がひび割れている状態でした。捕獲後は室内に戻り、調べ隊は身体計測、足環装着など一連の工程を見学し、一部の作業を手伝わせてもらいました。

   小学6年生の女子が「当たり前のことだけど、研究者は鳥を一番に考えて負担をかけないように行っていた」と感想を述べていたように、細心の注意を払って粛々と調査は行われました。それは衛星追跡装置を付けたオオジシギを、室内に造った湿地を模した空間に一時放ち、ストレスの有無を確認するため、ボランティアが別室でその行動を24時間監視するという徹底ぶりでした。

   翌々日、再びセンターへ行くと、ピンと張りつめた空気が漂っていました。これからいよいよ衛星追跡装置を背負ったオオジシギを野外へ放鳥するという場面だったのです。研究者による最後のチェックが完了し、そこにいた誰もが固唾をのむ中、オオジシギは調べ隊の一員の手から一拍間を置いて、空へと飛んでいきました。大役を務めた小学4年生は、緊張感からの解放と高揚感で、言葉が出ずその場でぴょんぴょん飛び跳ねていた姿が印象的でした。

   一通りの調査が終わったところで、子どもたちに感想を聞いてみました。そのうちの一人は「同じ小学校の子はオオジシギのことをあまり知らないから、どんな鳥かを教えてあげたい」。これはオーストラリアの研究者も、調べ隊に期待している活動の一つで、友達にコツコツ「伝えている」姿を思い浮かべると、頼もしく感じました。

   オオジシギの越冬地のジェラボンベラ湿地と、繁殖地の勇払原野。今回の訪問で、調べ隊は南半球にも自分たちと同じように、オオジシギの保護に取り組んでいる人がいることを心強く思い、越冬地で今起きている環境の変化をみて、それぞれ感じたことがあるでしょう。オオジシギがつないでくれたこの交流と調べ隊の活動は、これからも続いていきます。

   日本野鳥の会ウトナイ湖サンクチュアリネイチャーセンター善浪めぐみ

  (昨年12月に着任しました)

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