いずれはラムサール条約湿地にと、私たちが保全活動を進める弁天沼周辺。その特徴ある自然や、安平川下流域に計画されている河道内調整地(遊水地)の予定地を見ていただこうと、9月29日に日本野鳥の会苫小牧支部と「勇払原野とことこツアー」を共催しました。こちらは例年、初夏に行なっているイベントですが、今年は6月に市民会館でシンポジウムを開催したことから、秋の実施としたものです。
当日朝、ネイチャーセンターに集合したのは、苫小牧市のご家族をはじめ34人。中には、遠く関東から参加の大学生もいらっしゃいます。ラムサール条約湿地での環境教育を卒論のテーマにされており、それがきっかけとなったそうです。
オリエンテーション後、あいにくの雨の中を貸し切りバスに乗り込み、いざ出発。今回は、弁天沼を2カ所から観察するという初の企画です。まずは北東部で2グループに分かれ、ミズナラやキタコブシなどの林を歩きました。木にからみついたヤマブドウの葉は赤く色づき、熟した黒い実を付けています。
林が途切れたところで弁天沼に到着。広々とした空間が広がります。水辺には湿地特有の植物、ヤチヤナギ。背丈が10センチにも満たないコケオトギリは紅葉し、黄色く小さな花を付けています。あっ、チュウヒ。声が上がります。湿原にすむ、絶滅の恐れのあるワシタカ類です。秋色になったヨシ原の上をゆっくり飛ぶ様子を見ることができました。
勇武津資料館で昼食を取り、次は弁天沼の北岸へ。正面遠くに苫東厚真発電所を望み、水面にはカモ類の群れが羽を休めていました。そして空には魚を狙って飛ぶ、子どもたちに人気のミサゴの姿が。その後は、映画のロケ地跡に回復してきた自然を見たり、最近目立つようになったメガソーラー施設を車窓から見学したりしました。
ネイチャーセンターに戻り、千歳市の「もりもと」から提供いただいたお菓子でホッと一息。勇払原野に自生するハスカップがご縁となり、毎年、このツアーにご協賛くださっています。終了後の参加者からは、弁天沼に関する感想が多く聞かれました。市内に残る貴重な湿地を実際に見ることで、そこにどんな生き物たちがすんでいるのか、また、私たちがどのような活動を行なっているか、伝えることができたように思います。
(日本野鳥の会ウトナイ湖サンクチュアリ・中村聡レンジャー)
ヨシ原の上を飛ぶチュウヒを発見