朝焼けに飛び立つ数万羽のガン もうすぐ見頃

  • レンジャー通信, 特集
  • 2023年3月3日
ガンのねぐら立ち
ガンのねぐら立ち
マガンの成鳥(左)と幼鳥
マガンの成鳥(左)と幼鳥

  3月のある日の午前5時ごろ、暗い時間からウトナイ湖の水面は数万羽のガン類でにぎわいます。その幾万の鳴き声が響く観察路を、レンジャーと調査ボランティアの方とで歩いていきます。目指すは湖を見渡せるイソシギのテラス。そこでカウント調査をするためです。

   湖に近づくと、足元を照らすライトの光が湖を照らさないように消灯して歩いていきます。調査地点に到着直後は、暗さで水面が見えませんが、数万羽の鳴き声と気配が感じられ、次第に調査者の気分は高まってきます。朝焼けで明るくなりガン類の姿が見えてきたら調査の開始です。10羽に1回数取器を押して個体数を数えていきます。

   時間がたつにつれてガン類はどんどんとにぎやかになっていき、羽ばたき運動なども見られ、準備運動をしているかのようです。しばらくたつと、さらににぎやかになっていった鳴き声が一瞬静かになり、代わりに「ゴォ」という低い爆発音のようなものが響きます。ガン類が翼で水面をたたきながら一斉に飛び立った音です。飛び立ったガン類は鳴きながら空を覆い、渦を巻くように転回しながら採食場所へ飛び去っていきます。

   ウトナイ湖では、毎年数多くのガン類が飛来します。群れの大半はマガンという種類で、その他にヒシクイ、ハクガン、シジュウカラガンが主に観察できます。マガンは、ハクチョウ類とカモ類の中間ほどのサイズです。ガン類は、ロシア北極圏東部などで子育てし、日本の宮城県で主に冬を越します。その渡りの中継地としてウトナイ湖は利用され、秋の南下時の9月から12月、春の北上時の3月ごろが見頃となります。3月中に1万羽以上を見ることができるのは約2週間だけです。

   ウトナイ湖で見られるガン類は絶滅危惧種に指定されており、このような存在が数多く利用するウトナイ湖は貴重な自然が残る場所と言えます。ラムサール条約(特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約)に登録されているウトナイ湖らしい、季節限定の圧巻の風景をお見逃しなく。

  (日本野鳥の会ウトナイ湖サンクチュアリ・瀧本宏昭レンジャー)

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