森の分解者 ファンも多い秋の味覚 キノコのはなし

  • 支笏湖日記, 特集
  • 2021年11月12日
倒木に生えたサルノコシカケの一種

  晩秋の支笏湖の森を歩くと、さまざまな生き物との出合いを楽しむことができますが、キノコもその一つです。かわいい形のものや奇抜なデザインのものもあり、色合いもさまざま、おいしい秋の味覚としても存在感があってファンが多いですね。

   ここで突然ですが、「キノコって何?」と聞かれたら、あなたはどのように答えるでしょうか。ここでは私の知るキノコについて、少しだけ書いてみたいと思います。

   キノコは「菌類」という生き物が「胞子」(子孫を残すためにばらまく生殖細胞)を作るために準備した体の一部のことです。イメージしにくいと思いますが、菌類の本体は細長い細胞が縦に連なってできた「菌糸」でできています。また、菌類にもいろいろいて、キノコを作らない菌類の仲間を「カビ」といいます。

   彼ら菌類は、光を利用して栄養をつくる光合成ができません。だから、菌糸を張り巡らして植物など他の誰かがつくった栄養を吸収します。例えば、秋に降り積もった落ち葉や倒木がやがて土に返るのは、菌類によるところが大きいのです。さまざまな生き物の死体を、植物が利用できる栄養の形にまでバラバラにする働きを「分解」といいますが、菌類は細菌とともにその働きを担っています。とても目立たない存在ですが、菌類は生態系の中で物質を循環させる重要な役割を果たしている「縁の下の力持ち」なのです。

   写真は先日、森の中で出合ったキノコの「サルノコシカケ」の一種です。この菌類は、菌糸を樹木の中に縦横無尽に伸ばして栄養を吸収し、成長します。何十年もかけて木を腐らせて、土に返すわけです。多くのキノコはせいぜい数日でその役割を終えますが、サルノコシカケは何年にもわたって胞子をばらまき続けることができます。

   皆さんも秋の森でキノコとの出合いを楽しんでみませんか。

  (支笏湖ビジターセンター自然解説員 榊原茂樹)

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