英名「Blakiston’s fish owl」(ブラキストン博士の見つけた魚を食べるフクロウ)が示す通り、北海道を代表する鳥でもあるシマフクロウの主食は、川や湖などにすむ魚です。生息地域で捕らえやすいオショロコマやヤマメ、ハナカジカなど、全長20センチ程度の丸のみできるサイズを好んで食べます。
研究者の調査では、シマフクロウが繁殖するためには、100平方メートル当たり30尾以上の密度で魚が生息していなくてはいけないそうです。河川環境の改変などの影響もあり、北海道の大自然の中でもこの密度を満たす川は少なく、森林伐採も相まって、シマフクロウの現在の個体数は160羽程度と絶滅の危機にひんしています。
餌不足を補うため、環境省をはじめ当会でも、いけすに魚を入れて繁殖補助のための給餌を実施しています。しかし、どのくらいの魚をいつ追加すれば良いのかは、実際に付近の川を調べてみないと分かりません。そこで北海道の許可を取って給餌場のそばの河川で魚の密度を調査しました。
調査では、河川の一定の範囲内にいる魚をタモなどで捕獲していきます。取れた魚は体長や体重を計測し、標識を着けて放流します。そして再び同じように捕獲し、標識の着いた個体数を数えることで密度を計算します。季節を変えて調査したところ、秋には100平方メートル当たり70尾以上になることはあったものの、ヒナが巣立ちをして成長する春から夏にかけては100平方メートル当たり20尾程度と、自然下で繁殖するためには、まだ量が足りていないことが分かりました。
これまで知床や根室が中心だったシマフクロウの生息地は、個体数の増加とともに西へ広がり、現在では日高山脈以西まできています。もうすぐ皆さんの近くまでやってきます。道央を含む道内地域にシマフクロウが定着するためには、近隣の自然環境を包括的に見渡すような視座に立つことが必要となります。豊かな森、そして魚がたくさん泳ぐ川、これらの自然環境を守ることは、シマフクロウだけに限らず、私たちの豊かな生活にもつながります。
(日本野鳥の会野鳥保護区事業所=ウトナイ湖サンクチュアリ内=・松本潤慶レンジャー)