今年も苫小牧を出発したオオジシギ! 送信機を付けた3羽の行方は

  • レンジャー通信, 特集
  • 2021年9月3日
網場へ向かう調査メンバー

  皆さんは、春から初夏にかけて「ズビャーク、ズビャーク……ゴゴゴゴゴ」といった音を聞いたことはありますか?

   その音の正体は、環境省のレッドリストで準絶滅危惧の野鳥、オオジシギのオスが求愛や縄張りの主張で出す声と羽音です。

   主な繁殖地の北海道と越冬地のオーストラリアを行き来するこの野鳥と、その生息地を保全するため、日本野鳥の会は今年も7月に苫小牧市東部に広がる勇払原野で渡りルートを解明する追跡調査を行いました。

   事前に環境省の許可を得て、まずは日が暮れる前に捕獲用の網を広げます。そして夜から明け方に、間隔を空けて網場に向かい、オオジシギが掛かっていたらメンバーが丁寧に素早く網から外します。

   その後、計測や雌雄、成鳥、幼鳥の判別をします。私が参加したある日の晩に捕獲できたのは2羽の幼鳥で、脚に金属の足環(わ)と青いフラッグを付け、勇払原野に放しました。

   夜通しの調査をしても、捕獲できない日もあれば、捕獲できても衛星追跡送信機を付けられない日もあります。それでも、メンバーは何夜も地道な調査を続けることで、オオジシギがどこを渡るのか、どこを保全する必要があるのかなどの情報を得られ、成果が見いだせるのです。過去の調査では、2016年に送信機を付けた個体が、9月に苫小牧市を飛び立ち、洋上を6日間飛び続けてニューギニア島までたどり着いたことが分かりました。

   さて実は、この記事を書いているさなかの8月18日ごろより、今回の調査で送信機を付けた3羽のオオジシギが続々と苫小牧を飛び立ち、同24日に1羽がニューギニア島に、そしてなんと、2羽がオーストラリアに到着したことが分かりました。越冬地のオーストラリアまで渡る今回のルートは、世界で初めて解明されたことになります。

   皆さんも、足環やフラッグを脚に付けたオオジシギを見掛けましたら、ウトナイ湖サンクチュアリまでご連絡ください。

   ※渡りのルートは一つではなく、本州などを通過し渡る可能性もあります。

  (日本野鳥の会ウトナイ湖サンクチュアリ・和歌月里佳レンジャー)

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