皆さまご存じのようにバードウオッチングという言葉は英語から来ています。この言葉、日本語ではどのように訳せばよいのか。「野鳥観察」がもっとも適当な言葉でしょうか。ほかにも「鳥見」「探鳥」などという日本語もありますが、あくまで趣味として、娯楽として鳥を見に出掛ける場合は、やはりバードウオッチングという言葉以上にしっくりくる言葉はないように思われます。
さて、そんなバードウオッチングを楽しむ人を「バードウオッチャー」と呼びますが、他の似たような言葉として「バーダー」があります。こちらも英語からきた言葉で、プロ、アマ問わず、より真剣に鳥を観察し自然に溶け込んでいるような人を指します。そしてもう一つ、「トゥイッチャー」という言葉があります。珍しい鳥を追い掛けてあちこちに旅行し、自身のノートに詳細な記録をつける人を指し、イギリスなどの英語圏で使われる言葉です。
バードウオッチャー、バーダーという言葉は日本でもすでに一般的と言えますが、このトゥイッチャーという言葉を使っている人にはまだお会いしたことがありません。新聞という紙面の関係上、アルファベット表記は控えさせていただきますが、「トゥイッチ」という言葉は本来、体をぴくぴく動かす、ぐいっと引くなどの意味があります。ではなぜ、そんな言葉が鳥を追い掛け回す人の意味になったのでしょうか。
ガーディアン紙のウェブ版に語源について書かれている記事がありました。それには次のように書かれています。メドハーストさんというバードウオッチャーが友人とバイクでバードウオッチングに出掛けました。目的地に到着すると、メドハーストさんは興奮と期待からなのか、背中をピクピクさせ、震える手でたばこに火を付けました。それを見聞きした人たちがまねをし始め、いつしか鳥を見るために遠出をすることを「トゥイッチする」、そういう人のことを「トゥイッチャー」と呼ぶようになった、ということです。
あまりにものめり込み過ぎて周りが見えなくなっている人のこと、という意味で、やや悪い意味の表現になるため、他人に対し使用するのは控えた方がよさそうですね。鳥好きが高じて自制が利かない自分を自嘲の意味で「私はトゥイッチャーなので」と使うのが無難なようです。
ということで、これをお読みになっている皆さまは、人間も鳥も自然の一部というニュアンスの、バーダーであってほしいと思います。
(日本野鳥の会ウトナイ湖サンクチュアリ・中村太一レンジャー)