興味深い渡りのルート 北海道で越冬するオオワシ

  • レンジャー通信, 特集
  • 2020年12月4日
氷が張ったウトナイ湖に降りることも多いオオワシ(和歌月里佳レンジャー撮影)

  オオワシは、翼を広げると2メートルを超す大型のワシです。くちばしが黄色く、尾が白いのでオジロワシと紛らわしいのですが、オオワシはくちばしが巨大で体全体が黒っぽいのと、成鳥は翼の一部が白いので、そこで見分けることができます。またオジロワシは1年中ウトナイ湖に生息し周辺で繁殖していますが、オオワシは11月から3月ごろだけ見られます。

   そのオオワシの渡来を私たちレンジャーは、まだかまだかと待ち続けていました。ウトナイ湖周辺での最初の確認情報は11月9日で、ネイチャーセンターから確認できたのは、23日でした。毎年11月上旬に渡ってくるので、ほぼ例年通りの確認となりました。

   彼らはロシア極東やサハリンの一部で繁殖し、越冬のため北海道各地に渡来します。その渡りルートを知り、保護に役立てる目的で、1995~99年にオオワシに送信機を装着し、発信された電波を人工衛星で把握するという最先端技術を駆使した研究が行われました。

   その結果、ロシアで繁殖を終えたオオワシはいったん稚内の宗谷岬へ移動し、そこから国後・択捉島に渡り、流氷が押し寄せてくる厳冬期に北海道に戻ることが分かりました。春は、宗谷岬から繁殖地へ帰っていきます。

   このような興味深い動きを取る理由は、オオワシの主食である魚の量にあるようです。秋は北海道よりも国後・択捉島のほうがサケ・マス類の遡上(そじょう)が多く、逆に冬は不凍河川や漁業活動により魚が得られる北海道を選んでいるのです。ただ心配なこともあり、気候変動による海水温の上昇は、サケ科の魚類の分布域にも大きく影響し、私たちにもなじみのあるシロザケは、30年後には北海道に回遊しなくなる可能性があるそうです。ワシ類の主食である魚が減少すれば、今後彼らの生息にも影響が出ると考えられます。

   とはいえオオワシの北海道への渡来羽数が、現在減少傾向にあるわけではありません。昨年の2月下旬に行った調査では、勇払原野全体で24羽が確認されました。今年も多くのオオワシたちが渡来することを願っています。

  (日本野鳥の会ウトナイ湖サンクチュアリ・善浪めぐみレンジャー)

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