第57回夏休み読書感想文コンクール (2) 小学校中学年の部・最優秀賞 サイのなみだを救いたい 苫小牧拓勇小4年 京極(きょうごく) 大空(そら)君

  • 夏休み読書感想文コンクール, 特集
  • 2022年11月24日

  「ノシノシと歩くからノシオと言ったんだ」。旭山動物園、坂東園長から聞いた話だ。北海道にサイはいない。北海道で最後にいたサイがノシオ。ぼくが生まれる前に亡くなっている。調べていくうちにノシオの話が聞きたくて、当時飼育に関わっていた坂東園長に取材させてもらった。ノシオは見かけによらず、温和で優しい性格だったそうだ。人気者で象とも仲良し、たく山の人に囲まれて愛されていたノシオの写真を何枚も見せていただいた。

   サイは今、アフリカで密猟というおそろしい事態にまき込まれている。この地球上からサイがいなくなる日が来るかもしれない。絶滅しそうなのだ。サイの角はアジアで病気の薬として売買されている。もちろん効果はない。サイの角を持つことが自分の成功の証とも考えられている。悪いことだと知りながらアフリカの密猟者は、今日を生きていくお金がないのだ。だから密猟する。密猟と貧困は切りはなせない問題だ。密猟をなくすためにはまず貧困をなくさなければならない。そこから人間と動物が共生し合える平等で平和な世界が始まるのだとぼくは思う。

   ぼくに一体何ができるのだろう。まず、知りたいと思った。本や、動画を見て調べているうちに、現地に住むサファリガイドのユカさんを知った。ユカさんは日本とアフリカをつないでいる。ぼくは、オンラインで現地の様子を見せていただいた。サイは密猟者からねらわれないように、あらかじめ角を切ってしまう。空中からますいじゅうで打たれ、角を切られるのだ。サイにとってはヘリコプターでレンジャーに追われるのも、密猟者に追われるのと同じ気持ちかもしれない。たとえサイを守るためとはいえ、ユカさんたちも、きっとつらく、苦しい選たくだろう。

   ぼくは勉強がきらいだ。とにかく面倒なことはしたくない。そんなぼくに母が言った。「大空がのんびりぼーっとしている今、このしゅん間もサイは逃げているんだよ」。ぼくは、「はっ」とした。そうだ、ぼーっとしている場合ではない。サイは追われたり、母親を殺されたり、安心してねむることすらできないかもしれないのに、ぼくはいつものんきだ。

   考えてみると、アフリカのき機的な世界とぼくの世界、まるで本の中の出来事のような気がするが、この世界とぼくの住む世界は一しょ。同じ地球上にある同じ世界だ。未来の世界を変えるのはぼくだ。そしてぼくたちだ。

   サイ折り紙プロジェクトに参加した。サイが密猟されずにじゅ命を全うできることを願うものだ。ぼくもサイが強く生きていけるように心を込めて折った。この本に出合ってサイや遠いアフリカのことを考えた。知ることはぼくの力になる。未来はぼくたちが変えていける。このままではだめだ。未来に何もできないぼくではいたくない。声をあげていこう。平和な世界をつくろう。この思いがぼくたちの未来につながる。命あるもの全ての平等とかがやく未来の世界へ。ぼくは進む。

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